活動内容

あんたの出番よ! 第1回全国地域エネルギーサミットinながはま
エネルギーで地域を強くする。
思いを共にする250名が長浜に集結
2023年9月29日(金)、滋賀県長浜市の北ビワコホテルグラツィエにて、
『あんたの出番よ! 第1回全国地域エネルギーサミットinながはま』が開催されました。
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「エネルギーで地域を強くする」という思いを持った仲間が集まり、
強みや課題を共有しながら手を取り合い、
改めて立ち上がることを目的に企画された全国規模の地域エネルギーサミットです。
初開催を祝うかのような晴天に恵まれたこの日、
全国各地から総勢250名もの人たちが琵琶湖畔の会場に集まりました。


再生可能エネルギーなどの地域エネルギーに可能性を感じて地域づくりに活かしていこうとする地域の担い手や政策分野の担い手など、
民間、行政、世代の枠を超え、「強い地域づくり」のために刺激し合う一日となりました。
(執筆/スタブロブックス)
目次
目次
- エネルギーで地域を強くする。思いを共にする250名が長浜に集結
- 地域に対する思いで意気投合。ノリの良さもサミット後押し
- 首脳会議ならぬ主濃会議?先進地域のウズ・モヤ共有
- ウズ・モヤ解決の突破口を求め250名がディスカッション
- 豊かな地域を次の世代に。未来に向けた大きな一歩
地域に対する思いで意気投合。
ノリの良さもサミット後押し
なぜ全国規模のエネルギーサミットが長浜市でおこなわれたのか?
発端は、長浜市木之本町を拠点にバイオマスエネルギー事業に取り組む久木裕さんの思いでした。
2014年に株式会社バイオマスアグリゲーションを設立し、湖北地域に根を張り活動を続けてきた久木さん。


「もっと地域主導でエネルギー事業を展開するためにはどうすればいいか」。
そんな募る思いを環境省の佐々木真二郎室長(大臣官房地域政策課地域循環共生圏室)に打ち明けたところ、
先進事例として紹介されたのが、
福岡県八女市の「エネルギーの地産地消供給システム(LED’S:Local Energy Direct Supply)」でした。
「LED’S」とは、八女市で太陽光発電事業などに取り組む株式会社アズマを筆頭に、
八女地域の中小企業73社の出資で設立された地域新電力会社「やめエネルギー株式会社」のシステムです。
久木さんは、やめエネルギー株式会社の発起人であり、株式会社アズマの代表取締役社長を務める中島一嘉さんに連絡を取り、ZOOMで挨拶をすることになりました。

「かずちゃん(久木さんをはじめサミット実行メンバーは中島さんをこう呼ぶ)との話でとくに印象的だったのは、バイオマスと太陽光で分野は異なるけれど、地域に対する思いが同じだったこと。『エネルギーで地域を強くしたい』という共通の思いを抱いていたんです」(久木さん)
中島さんは生まれ育った八女を子どもや孫の代につなぐために、
「強い田舎を創りたい」との理念を掲げてエネルギー事業に力を注いできました。

”地域でエネルギーをつくり、地域内で循環させることが強い田舎を創る第一歩”
”エネルギーの地産地消で八女の豊かな自然と経済が両立し、子どもたちがハッピーに暮らせるまちになる”
「そんなかずちゃんの思いにめちゃめちゃ共感し、よし、長浜のみんなを八女市に連れて行こう!
と視察を決めたんです」(久木さん)
さっそく久木さんは志を共にする地元のメンバーに声をかけ、2023年3月末に八女市に訪問。
さらにその2か月後に再訪した際、八女市のメンバーに加え、
周辺地域のプレーヤーも交えた懇親会が用意されました。

「そこでも熱く盛り上がり、地域に対する思いで意気投合したんです。
『この盛り上がりの環を広げるために、全国規模でサミットをやったらめっちゃオモロくない?』。
そんな感じで、半ばノリでサミットの開催が決まりました」(久木さん)
中島さんはこう話します。
「地域で活動する人たちは同じ思いを抱いているけど、なかなか一歩目を踏み出せないと感じていました。
でもこの長浜のみんなとなら、面白いことがきっとやれる。
そう直感し、『一緒にやろうぜ』って話が一気に進み始めました」
こうして長浜メンバーの二度の八女訪問でサミットが決定。
以降、急ピッチで準備が進められ、9月29日の本番を迎えたのでした。

サミットの合言葉の「あんたの出番よ!」は、中島さんの会話から自然に生まれたといいます。
「若い人と地域がどうつながるか。活動の中で生まれるモヤモヤをどう解決するか。
今こそ、あんたの出番よと言いたい」
そんな中島さんの言葉がきっかけとなり、「あなたの力が必要」と呼びかける意味も込めて合言葉に採用されました。
「ちなみにチラシやTシャツのイラストは、長浜メンバーと八女メンバーが出会って化学反応を起こした様子が表現されています」と久木さん。



「おばちゃんが手に持つ瓶はメントスコーラといって、コーラの中にメントスを入れると噴き出す現象が描かれています。今回のサミットで全国各地のプレーヤーたちが出会い、強みや悩みを共有して次なる起爆剤になれば――そんな思いを込めました」
首脳会議ならぬ主濃会議?
先進地域のウズ・モヤ共有
午前の部の「主濃会議」は10時に始まりました。
サミットの首脳会議ならぬ〝主濃会議〟とあるように、先進地域で活躍する濃い人たち=キーマンがズラリ。

各自の自己紹介と取り組み紹介のあと、
主に話し合われたのはサミットのテーマでもある「ウズウズ」と「モヤモヤ」について。
地域で活動するほどに沸き上がる「これもやりたい、あれもやりたい」という「ウズウズ」した気持ち。
一方でエネルギー事業を推し進めるほどに思うように進まない「モヤモヤ」した気持ち。
先行地域のリーダーたちが抱えるウズ・モヤの共有と集約を図り、知見として蓄えるのが狙いです。

「ウズウズ」の一例をあげると…
·「山川に恵まれた地の利を活かし、自然の力を地域のエネルギーにどう変えるかウズウズしている」
·「環境×経済×社会の掛け算で、地域がさらに明るいまちに変わっていく、そんな姿を見るのが待ち遠しい」
·「この場にあえて帽子と短パンで出てきたのは、地域の若いやつを引っ張り出すため。お前が表に出なくてどうする! と発破をかけていきたい」…など。


一方の「モヤモヤ」の一例は……
·「次世代のプレーヤーが少ない。山が多い地域だが、林業の仕事は厳しく、子どもに継がしたくない声も聞く」
·「FIT制度に思うところあり。地域が豊かになる制度設計が求められる」
·「行政には異動があり、一貫性ある仕事に取り組みにくい面がある」
·「地域に関心の高い学生が増えているが、いざ地域に関する仕事を希望しても就職口がない」……など。


総じて、エネルギーがもたらす地域の未来は明るい一方で、
次世代のプレーヤーが活躍できる状況をいかにつくり上げていくかがポイントであるとの意見が目立ちます。
ついで、ウズ・モヤを踏まえ「あんたの出番よ! と言いたい人は誰?」との問いに対しては……
「市長」「教育委員会」「議員」「若手行政職員」「省庁」といった行政サイドへの声が上がった一方で、
「地元企業」「本気の経営者」「子どもたち」「地域の女性のキーマンや子育て中の女性」「高校生」「地域の高齢者」といった多様な立場の人たちに向けた声も。
つまり「誰ひとり欠かすことができない」「全員が主役である」との理解が共有され、
午前の部は終わりを迎えました。

ウズ・モヤ解決の突破口を求め
250名がディスカッション
午後からは、全国から集まった全員参加による進行に。

午後1部は13時にスタートし、まず主催者である湖北市民会議から髙橋康之会長、
ホストシティである長浜市の浅見宣義市長、による挨拶がおこなわれました。


ついで「TEAMあんたの出番よ!」のメンバーの清水広行さんと中島一嘉さんが
サミット開催に至るまでの経緯とサミットの主旨を説明。

その後、長浜メンバーと八女メンバーを引き合わせた環境省の佐々木真二郎室長の挨拶がおこなわれ、
以降は先進地域の取り組みや課題、それぞれに思い描く未来が共有されました。




その後のパネルディスカッションでは、先行するプレーヤーと地域の担い手が登壇。
午前の主濃会議で共有された話も踏まえ、それぞれの登壇者が抱える「ウズ・モヤ」、
そして「あんたの出番! のあんたは誰?」といったテーマで白熱したディスカッションに。
登壇者の熱い思いや本音が垣間見えるやり取りに、およそ250名が見守る会場全体が熱を帯び、一体感に包まれました。



午後2部は15時にスタート。
登壇者と参加者が入り混じり、テーブルごとに会話する「ワールドカフェ」がおこなわれました。
さまざまなテーマを設定したテーブルを用意し、各プレーヤーが関心あるテーマに分かれ、
それぞれのウズ・モヤを突破する糸口を見つけていくのが狙いです。



各テーブルのテーマの内容は、
「パートナーシップってどう創るの?」
「ウズ・モヤしている実践者」
「自分にできることって何?」
などなど。
各プレーヤーが抱える悩みや思いをシートに書き込み、つぎのテーブルに移動します。
そしてまた元のテーブルに戻り、周りの人たちと話をシェアしていく流れ。
普段、かかわりをもつことがない人同士が対話を重ねることで、新たな発見やつながりが生まれた有意義な時間となりました。

豊かな地域を次の世代に。
未来に向けた大きな一歩
最後に、参加者全員に「マイ義体書」とよばれる一枚の用紙が配られました。
これはサミットを通じて決意したことや、これからの自分に向けたテーマなどを記す宣言書です。
思い思いに書き込んだマイ義体書を手に、
明日からの地域活動の具体的な行動につなげてほしいとの主催者の願いが込められています。

そしてサミットの締めくくりとして、「ながはま義体書」の採択がおこなわれました。
「ながはま義体書」とは、サミットを通じて話し合われ、共有された内容を集約した文書のこと。
浅見市長と髙橋会長が力強く読み上げ、
「あんたの出番よ! 第1回全国地域エネルギーサミットinながはま」は盛況のうちに幕を閉じました。




なお、第2回の全国地域エネルギーサミットは福岡県八女市での開催が決まっています。
「今後も〝共感〟の場としてサミットを継続し、もっと広げていきたい」
と展望を話す久木さん。
志を共にする人たちが今回のサミットでつながり、すでに新たな取り組みが各地で次々と生まれているとのこと。
イベント終了後には、環境省の佐々木さんがこんな思いを語っています。
「これほどたくさんの人たちが全国から集まった。
ひょっとしたら、今回のサミットをきっかけにこの国が本当に変わるんじゃないか。
そう思わせてくれるほどの熱量を感じました。」
サミットに参加した人たちが経験とノウハウを持ち寄り、思いを共有して結束し、
それぞれの地域でエネルギーを掛け合わせたまちづくりに本気で取り組んでいきます。
そうすれば、〝ひょっとしたら〟の実現の可能性が高まり、
豊かな地域を次の世代に必ずやつないでいけるようになる。
そんな明るい未来に向かうための大きな一歩を踏み出した歴史的な一日となりました。







エネシフ湖北のメンバーとして気まぐれに記事を執筆。湖北地域の面白い動きや地域づくりに関するオピニオン等を発信。