灯台もとテラス

articles 活動内容

2026.01.07

「断熱」を通して地域とつながる学び 木之本中学校×断熱ワークショップ

2025年12月20日、木之本中学校で断熱ワークショップが開催されました。

このワークショップは、生徒たちが自らの手で資金集めから行い、実現した取り組みです。
エネシフ湖北は、ワークショップの仕立てから伴走支援を行いました。
約半年前から準備に取り組んできた生徒たちの集大成。1日の様子をレポートします。

参加したのは、生徒会に所属する13人の生徒たち。今回断熱を行うのは、生徒全員が日常的に利用する共用の学習室です。

生徒たちの力で実現した資金調達

今回の断熱ワークショップに必要な資金は、生徒たち自身の手で集められました。
8月から、生徒たちは地域のイベントに参加し、募金活動を実施。さらに、町内11店舗に募金箱を設置するなど、地道な活動を続けてきました。
こうした取り組みに地元企業からも寄付が集まり、およそ100万円の資金が集まりました。

当初、先生方の間では「実現は難しいのでは」という不安の声もあったと言います。
しかし、生徒たちが自ら地域を回り、募金を集める姿を目の当たりにし、その行動力に心を動かされたと振り返ります。

「断熱とはなにか」を学ぶ

作業に入る前に、断熱の基礎や環境との関係について、株式会社バイオマスアグリゲーションの久木裕さんが解説しました。断熱とは、室内の暖かい空気や冷たい空気を外に逃がさないようにする技術のこと。

実は、部屋の熱の多くは窓から出入りしており、冷房使用時は73%、暖房使用時は58%もの熱が窓から移動していると言われています。

(引用:環境省

木之本中学校の窓枠は熱を伝えやすいアルミサッシです。そこで木枠サッシを取り付けて二重窓にすることで、窓と窓の間に空気の層を作り、断熱効果を高めます。

あわせて、長浜市が掲げる「ゼロカーボンシティ宣言」についても紹介されました。長浜市では、2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロを目指しています。

引用:ながはまゼロカーボンビジョン2050

断熱は、光熱費の削減や省エネにつながるだけでなく、CO₂排出量の削減にも効果的です。さらに、室内の温度差を小さくすることで、ヒートショックの予防など健康面のメリットもあります。

「快適に過ごすことが、結果として環境を守ることにつながる」という内容に、生徒たちは真剣な表情で耳を傾けていました。

実践!断熱ワークショップ

早速、断熱ワークショップがスタートしました。作業は、次の3つの工程で進められます。

① 事前に大工さんがカットした木枠を組み立て、内窓を作る
② 断熱材(スタイロフォーム)をカットし、壁部分に設置
③ ベニヤ板を貼って仕上げる

作業には、髙橋建築、ココ―設計事務所、リブランキクヤ、上村建築など地元の職人の皆さんが参加。窓枠の設置などの事前準備も含め、このワークショップを支えてきました。

職人さんたちが事前に用意した内窓の部品。上下が分かるように印も付けてくれています

使用する木枠には、目の詰まった国産杉材を使用。
生徒たちは職人さんに教わりながら、ひとつひとつの工程に取り組んでいきます。

【木枠を組み立て内窓作り】

最初の工程は木枠の組み立てです。インパクトドライバーなど、初めて使う道具も、「力を入れすぎないで」「道具はこうやって持って」などアドバイスをもらいながら作業を進めます。

大きな内窓を完成させるのは一苦労です。数ミリ単位で計測して印を付ける作業では、職人さんが定規の当て方、持ち方まで実演しながら教えます。

時には「ちょっとネジが斜めになっちゃった!」と笑い合う場面もありつつ、着実に内窓が形になっていきました。

数ミリ単位で計測して印を付けています。
細かな微調整は職人さんがお手伝い。

木枠の組み立てが終わると、次は透明のアクリル板を取り付ける工程です。

慎重に位置を合わせ、内窓を枠にはめ込んで完成!

木の窓が入るだけで、教室が温かみのある雰囲気に変わりました。

【断熱材・スタイロフォームをカット】

断熱材として使用するのはスタイロフォームです。触ってみると、「ちょっとあったかい!」と生徒たち。スタイロフォームは、発泡ポリスチレン製で熱伝導率が低く、断熱効果がある素材です。

設置場所のサイズを測り、ぴったり合うように断熱材をカットしていきます。一見簡単そうに見えますが意外と力がいる作業です。

サイズを測る人、カットする人、定規を押さえる人と、自然に役割分担が生まれ、協力しながら作業を進めました。

木枠にカットした断熱材をはめ込みます。

ちゃんとはまるかドキドキ…。

見事ピッタリとはまりました。元の壁は、触るとひんやり冷たかったですが、断熱材を入れることで外気の影響を受けにくい壁を作ることができます。

【ベニヤ板を貼って完成へ】

最後の工程は、ベニヤ板を貼る作業です。生徒たちが、ベニヤ板に印を付け、大工さんがカットします。

数ミリ単位での修正にも対応する職人技です。

職人の手仕事を間近で見る貴重な機会に、生徒たちからは「すごい」「かっこいい」という声が上がりました。

カットしたベニヤ板を、先ほど断熱材を入れた壁にビスで取り付けていきます。

ここでも、職人さんたちは、ビスの打ち方や角度、力の入れ具合など仕上がりの美しさにこだわる姿勢を伝えます。
真剣に聞いて、実践する生徒たち。作業が進むにつれ、最初はおそるおそるだった工具の扱いも、慣れた手つきになっていきます。
指導を受けながら、自分たちでどんどん仕上げていく姿が印象的でした。

完成の瞬間には拍手が起こり、「もうあったかくなってきている気がする」「木の見た目も温かみがある」と、達成感に満ちた声が上がります。自分たちの手で、そして、プロの職人さんたちと共に学習室を変えたという実感が、生徒たちの表情に表れていました。

【サーモグラフィで断熱効果を確認】

最後に、サーモグラフィーを使って断熱効果を確認しました。サーモグラフィーは、温度を測定し、温かい部分を赤、冷たい部分を青で可視化する装置です。

サーモグラフィーで断熱効果を検証!

完成した二重サッシ部分は赤く表示され、開けたままの窓は青く映ります。断熱効果が一目で分かる結果に、生徒たちからは驚きの声が上がりました。目に見えるかたちで効果を実感できた様子です。

参加した皆さんのコメント

「地域の皆さんの協力で実現」生徒会長・久木咲那さん

「初めは本当に募金が集まるのか不安でした。でも、地域の方のたくさんの優しさでお金が集まって感謝の気持ちでいっぱいです。『自分の子どもが木之本中学に通っていたから』と言って募金してくれた地域の方がいて、印象的に残っています。中学に地域の人が来る機会は多くないので、学生達の活動をもっと地域の人に伝えていきたいです」

今回のワークショップ実施のきっかけは、久木咲那さんが生徒会の公約として「断熱ワークショップを行うこと」を掲げたことでした。咲那さんは、バイオマスアグリゲーション久木裕さんのお子さんで、日頃から父の活動を目にしてきたことも、公約に込めた思いの一つだったと言います。

「活動が実ってうれしい」生徒たち

「夏から募金活動をしてきてその活動が実ってうれしかった」
「大変だったけれど、楽しかったし、サーモグラフィーで本当にあたたかくなっているのが分かった」
「これからこの部屋が断熱できると思うといい活動ができたと思う」
達成感に満ちた表情が印象的でした。

「地域とのつながりに感謝」校長・山本晃生先生

「昨年同様の取り組みを行った伊香高校への聞き取りや、認定こども園への訪問など、この活動を通して地域とつながることができました。大工さんなど職人の仕事が少なくなっている中で、将来の選択肢の一つとして知ってもらえたことも素晴らしいと思います」

「思いを発信しつなぐこと」教頭・中辻崇先生

「初めは難しいと思っていた取り組みでしたが、約半年前から募金活動に取り組んできた生徒たちの姿を見て、思いを発信すれば必ずつながるのだと感じさせられた半年でした」

「何かに挑戦する時に思い出して」ONESLASH代表・清水広行さん

「学生は、大人の協力を得やすく、思いを実現しやすいタイミング。高校に進んでも、学生というブランドを意識して活動を続けると動かせる未来が変わるはず。この窓は、学校がなくならない限り残り続けるので、大人になって何かに挑戦するときや、母校を訪れたときに思い出してもらえたら」

まとめ

今回の断熱ワークショップは、生徒たちが資金集めから主体的に動いたことで実現した取り組みです。
地域の方々から温かい支援を受けた生徒たちの口からは、「地域の皆さんのおかげ」という言葉が何度も聞かれました。

また、「生徒たちで資金集めからやったというのがすごいよなあ」と話す職人さんの言葉からも、子どもたちが「やりたい」と声を上げ、その思いに大人たちが応えることで、地域全体が動いていった様子が伝わってきます。

こうした「自分たちで考え、動き、地域とともにつくる」学びの場が広がることで、断熱や省エネといったテーマが身近なものとなり、持続可能なまちづくりへとつながっていくことを願っています!

<施工協力>
髙橋建築
・ココ―設計事務所
リブランキクヤ
・上村建築

<募金箱設置協力>
角屋/つるやパン/富田酒造/速水電機/やまぐち/キクヤ/ダイコウ醤油/きのもと交遊会館/福田屋/はとや/丸忠

地域の職人の皆様、そして温かいご支援をいただいた地域の皆様、本当にありがとうございました。

contact

ご質問やご相談・取材依頼など、
各種お問い合わせはこちらから